宇都宮市吉野の be off を拠点にダンサー・コレオグラファとして活躍しておいでの妻木律子さんが、久々に「ダンストライ」を開催なさいました。要するに妻木さんのダンス公演なんですが、リサイタルほど肩肘張ったものではなく、劇場やスタジオに限らず色々な場所へ出向いてダンスをしたり、お客様と交流したりしながら有意義な時間と空間を共有しようとする試みです。今回は「TOCHIGI Cafe ツアー 2016」と銘打って、黒磯・宇都宮・栃木市とまったく風合いの異なる3個所のカフェを巡りました。黒磯と宇都宮で写真撮ってきましたので、2回に分けて掲載します。
黒磯の会場はセンスの良さとクオリティの高さで大変に有名な CAFE SHOZO の音楽室。本店の隣の建物の2階で、昔はキャバレーとして (!) 使われていた空間らしいです。SHOZO らしくカジュアルな中にさりげなくアンティークな演出が施してあったり、きわめて上質なフードやドリンクが提供されたりする多目的空間とでも言いましょうか。音楽ライブはもちろんのこと、いろいろな催しに使われているようです。
今回のダンストライには妻木さんだけでなく、インド舞踊が専門でダンスセンターセレニテ (妻木さんが主宰するダンススタジオ) にも参加しておいでの山田哲也さんと、セレニテボーイズクラスの渡辺晴夫さんも出演なさいました。3部構成になっていて、まず妻木さんが全体導入のように踊り、山田さんと渡辺さんのデュオを挟んで、最後にもう一度妻木さんが踊ります。
今回、妻木さんの踊りは実に自在で軽やかでした。前回の「空谷の跫音」が大変に重たいテーマを扱っていた (ように見えた) 所為か、私より少しだけ年上のはずなのに思いっきり若返っていらしたような。そもそもダンサーと言うのは不思議な生き物で、年齢を重ねると肉体的には衰えるはずなのに心はどんどん束縛を離れて自由になり、その結果お客に見せる身体の動きも自由自在になります。つまりは心のままに好き勝手ができるようになるわけで、好き勝手をして賞賛されるんだからまったくもってずるい。そのずるい身体は実に雄弁で、第3部に使われていた楽曲がベートーヴェンのピアノソナタ第23番「熱情」の第2楽章と第3楽章だったんですが、第2楽章の主題に乗せた踊りを見ていると、本来どこにも存在しないはずの歌詞が聞こえてくるような気がしたほどでした。
もちろん歌詞云々は見ていた私の妄想に過ぎませんが、「なんと~かかんとかで~、なんと~か、Auf wiedersehen」みたいに思えたんですね。何かに区切りをつけてそれとは訣別し、新たなパッションをもってこれから先も踊り続けるぞ、と言った妻木さんの決意を強く感じる踊りでした。それに、何せ「熱情」だから第3楽章のコーダに入ってからの粘着感が凄いでしょう。この部分も踊りに執着し続ける妻木さんの姿とダブって聞こえていたことです。山田・渡辺デュオについては次回に。
振付・演出・出演:妻木律子
出演:山田哲也, 渡辺晴夫
制作:佐山裕美
スペシャルサンクス:SHOZO, 鵜飼雅子
撮影:2016年10月29日
機材:ニコン D7200, D5500. レンズ:AF-S DX 10-24mm f/3.5-4.5G ED, AF-S DX 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR.
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